エス・イー・シーエレベーター株式会社

Next Movement

宇宙エレベーターって本当に実現するの?

宇宙エレベーターとはどんな乗り物?

宇宙エレベーター。その響きから、SFの世界を彷彿とさせますが、実はその原理は科学的に認められています。地上のエレベーターと同じように、ケーブルを使って文字通り“登り降り”するのです。

現在の宇宙開発のメインとなっている、ロケットによる宇宙輸送技術は、墜落や爆発の危険性を伴いますが、宇宙エレベーターにはその心配がありません。また、ロケットはその大きな推力を得るために、膨大な燃料を積んで宇宙へ飛び出します。そのため、あまり燃料効率の良くない輸送手段と言えます。宇宙エレベーターの技術では、ケーブルに沿ってエレベーターを上下させるための電力がまかなえれば、とても燃料効率の良い輸送手段となるでしょう。燃料の燃焼によって排出されるガスによる、大気汚染などの地球環境への影響もほとんど無いと考えられます。

さらに、宇宙エレベーターが実現すれば、特別な訓練を受けた宇宙飛行士だけでなく、一般の人びとが、地上のエレベーターを利用する感覚で、まさに、「宇宙旅行」の感覚で、安全に、手軽に宇宙へ行くことができるのです。

宇宙エレベーターは、日本では軌道エレベーターとも呼ばれ、SF作品などに登場するだけの夢物語と考えられていました。しかし1991年、日本において「カーボンナノチューブ」という素材が見つかったことにより、実現の可能性が飛躍的に向上しました。まず、宇宙エレベーターの仕組みを概観し、次に、その実現の鍵となる、カーボンナノチューブについて解説していきます。

宇宙エレベーターの仕組みを簡単解説

宇宙エレベーターの仕組みを簡単に説明しましょう。

地球の赤道上空、高度約3万6000kmは、静止軌道と呼ばれていて、この軌道を回る衛星を静止衛星と言います。この軌道では、地球の内側(下側)へと引っ張られる重力と、外側(下側)に飛び出そうとする遠心力がちょうど釣り合っています。

静止軌道に衛星を打ち上げて、その衛星から、まず地上へ向けてケーブルを伸ばします。ケーブルを下げた分だけ、地球側の方が重くなりますので、それに釣り合うように、反対側(宇宙側)にもケーブルを同じ分だけ伸ばしてバランスを取ります。また同じように、地上向きにケーブルを伸ばして、同じ分だけ宇宙側にもケーブルを伸ばしてバランスを取り、さらに、今度は両方向のケーブルの長さを思い切って長くしていきます。1km、10km、100km、1000km……というように段階を踏みながら長くしていくと、ついには地球に向いたケーブルの先端が、地表に届くのです。もしも、このケーブルが、桁外れに丈夫であれば、ケーブルを活用して乗り物が上下することもできるでしょう。これが、地上と宇宙を行き来する、「宇宙エレベーター」となります。

宇宙エレベーターの実現可能性は?!

宇宙エレベーターに近い概念を初めて世に示したのは、ロケットの祖として知られる、ロシア(旧ソビエト連邦)のコンスタンチン・エドゥ・アルドビッチ・ツィオルコフスキーという物理学者です。1895年にツィオルコフスキーが発表した作品の中で、その構想を発表しています。

このように、宇宙エレベーターは、科学者やSFファンの間では、古くから知られていましたが、技術上の問題が指摘され、特に宇宙から地上へ下ろすケーブルの強度を保てるだけの素材がないということで、夢物語とされていました。

まさに、宇宙エレベーター実現の鍵となる部分は、そのケーブルの素材です。現在、高張力に耐えられる高強度のケーブル素材の研究がされている段階です。また、ケーブルは、強度だけでなく自分自身の重さを支える必要もあるので、素材自体が軽いという条件が必要となります。その材料の候補として、先述のカーボンナノチューブという素材があげられています。

カーボンナノチューブは、炭素原子が六角形の網目状に並んだ平面を丸めて筒状にした構造を持ち、中空の細長い円筒形の物質です。カーボンナノチューブを構成している、炭素原子が規則正しく並んでいる網目構造は、原子同士のつながりとしては最強の結合であり、そのため引っ張りに対してとても強い物質となっています。その強度は、ピアノ線の25倍以上、ケブラーの20倍ほどもあると言われています。また、円筒内が空洞のため、密度は小さく、ケブラーに対してはわずかに軽い程度ですが、ピアノ線に対しては6分の1ほどしかありません。

現在、カーボンナノチューブの研究課題には、長くするための問題と、均質化の問題があります。これがクリアされれば、十分に宇宙エレベーター実現への可能性はあると言えるでしょう。

2013年、IAA(国際宇宙航行アカデミー)は、宇宙エレベーターの実現可能性を評価しました。アメリカでは研究者が集まり国際会議が開催されたほか、宇宙エレベーターの技術を競うコンテストも開催され、日本の建設会社では、実現に向けたプロジェクトが立ち上がっています。2009年からは、宇宙エレベーターチャレンジというコンテストも実施されています。

また、地上だけではなく、宇宙でも宇宙エレベーターの実験が始められています。現在、宇宙ステーションでカーボンナノチューブを宇宙環境に曝し、その影響を評価する実験をしています。この実験は、カーボンナノチューブを糸状にした試験体を国際宇宙ステーションの日本の実験棟「きぼう」の船外プラットフォームに1?2年置いたままにしたあと地球に持ち帰り、強度の変化を調べることで、宇宙環境の放射線や原子状酸素、紫外線などの影響を調査するものです。

宇宙エレベーターの技術的課題がクリアされれば、「今度の週末は、宇宙へ行ってきます!」といった会話が普通に行われる時代も、近い将来にくるかもしれません。