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人材不足! 時代は機械工学を学ぶ方を求めている!

人材不足はどの業界においても言われることですが、理工系、とくに機械工学に長けたエンジニアの人材不足が問題となっています。さまざまな産業で必要とされる機械工学系人材の不足は、今後の産業に大きな打撃を与えると懸念されています。

本記事では、その現状と対策についての解説と、機械系学生におすすめの業界も紹介します。

政府の調査結果から見えてくる「機械工学系エンジニア」の不足

平成30年4月、経済産業省は「理工系人材の需給状況」というアンケート調査の結果を公表しました。 この調査によって、機械工学系エンジニアは企業ニーズが高いにも関わらず、圧倒的な人材不足に陥っていることがわかったのです。それぞれ企業・社会人を対象に3000を超えるサンプルを集計していて、以下はその調査内容の3項目です。

1)「企業が必要とする分野」と「大学で学んだ分野」との比較(社会人対象)
2)平成29年度「採用予定人数」「採用実績数」と平成31年度「採用希望人数」の比較(企業対象)
3)5年後技術者が不足すると予想される分野(企業対象)

「機械工学」という分野の企業ニーズの高さは、1つ目のアンケート結果によって導きだされました。 800人を超える社会人に「大学で学んだ分野」と「仕事で学んだ分野」を聞いたところ、会社に入ってから学んだ分野として、最も多く回答されたのが機械工学なのです。実際に就職してみると、大学で学んだことと異なる知識や技能を要求されるシーンが多々ありますが、機械工学はこの特色が強いようです。

人材不足という点については、2つ目のアンケート結果から見えてきました。 これは平成29年度における1300社以上の「採用予定」「採用実績」「採用希望」を集計し、各分野でジャンル分けをしたものです。理工系の多くの分野が人材確保に苦しんでいますが、その中でも機械工学分野はとくに採用が少なく、予定人数のわずか83%程度しか採用できていない状況です。単純に考えると、想定より約20%不足しているのです。

3つ目のアンケートは、1300社以上を対象に、5年後に「最も不足する分野」「2番目に不足する分野」「3番目に不足する分野」を各分野から回答してもらったものです。3つの回答を合計した結果、機械工学が全体の12.4%にも達しました。これは全90分野でもトップの回答数で、8社に1社が「5年後は機械工学系エンジニアが不足する」と感じていることを意味します。

しかし、これは当然の結果といえるでしょう。なぜなら、企業が欲しがっているにも関わらず、採用が捗っていないのですから。これまで産業を支えてきた団塊世代が一線を退く時期でもあり、まさに今、時代が「機械工学を学ぶ方」を求めているのです。

エンジニア不足に対する取り組み

機械工学系エンジニアを含む理工学系人材不足の深刻化を懸念して、すでに下記のような様々な取り組みがスタートしています。

・若年層の関心を高める試み
・教育現場におけるカリキュラムと情報網の強化
・エンジニアとして就業しやすい環境づくり

例えば、人材育成の第一歩として若年層が機械に興味を持ってもらうため、ここ数年ものづくり系の体験型セミナーが多数開催されています。自動車技術会が主体となって開催する「キッズエンジニア」が有名どころですね。エンジニア指導のもと、子供たちが機械と触れ合える場を提供しています。

子供たちに向けた取り組みとしては、「国立大学55工学部」が開催する体験型教室なども人気。具体例としては「発見!メカワールド2018(東京農工大学 工学部)」や「ものづくり体験学習(岐阜大学 工学部)」など、各大学が機械工学の関心を高める取り組みを行っています。工作機械を使った金属コマ作りなど、工学部ならではの本格的な製造体験が可能ですよ。

また、国立大学55工学部の公式ページでは、各大学の研究成果や現役学生・卒業生の生の声など、工学部における詳細な情報が公開されています。機械工学に関することも細かく掲載されているので、進路に悩む高校生にとっては、いい判断材料になりそうです。

実はエンジニアの人材不足は海外諸国でも問題となっています。この打開策として打ち出されているのが、「STEM教育」と呼ばれる政策です。

STEMとは「Science Technology Engineering and Mathematics」の略称で、すなわち「科学・技術・工学・数学」分野のことを指します。科学技術開発など、STEM分野に精通した人材を育てるため、アメリカでは2000年代より始められました。具体的には、義務教育〜高等教育の長期間にわたって、積極的に理工系分野のカリキュラムを設ける教育方針です。

2013年に国家科学技術会議(NSTC)が発表した報告によると、2020年までに初等中等教育段階のSTEM分野教員を10万人増やし、高校卒業までの間でSTEM分野の経験を持つ若者を毎年50%増加させることが目標とのことです。

このような動きはアメリカをはじめ、ヨーロッパや中国でも始められており、理工系分野の人材育成が世界的に重要視されていることがわかりますね。

日本ではSTEM教育の一環として2002年より「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」という制度がスタートしました。SSHに認定されている高校は、具体的にはこのような教育が実施されます。

・理数系科目に重点を置いたカリキュラムに編成
・大学や研究機関と連携して、「大学の講義を受講」「研究機関の体験実習」などを実施
・指導方法を研究し、教員の指導力を強化
・論理的思考力、創造性、独創力を養うため、科学クラブなどの活動を充実化
・研究者や技術者、SSHに認定された他校との交流

現在、250校以上の高校がSSHに認定されており、認定校は年々増えている状態です。この調子でいけば「エンジニアの卵」がどんどん増え、機械工学系エンジニアの増員につながるかもしれませんね。

大学生の情報収集という点においては、日本機械学会がとても力を入れています。 最近とくに注目されているのは「メカジョフォーラム」というイベント。これは機械工学を学ぶ女性がエンジニアとして働きやすくなるように、情報の共有を行う場です。他大学の学生とつながることができることもメリットで、参加する女性は年々増えているようですね。

エンジニアを引き入れるには、就業しやすい環境を整えることも大切。従来は専門的な知識や技能を持たないと、機械工学系のエンジニアとして勤めることは困難でした。しかし、最近では研修制度が整った企業や、短期の研修セミナーなどが増え、実務経験がなくても機械工学系エンジニアとして就業できる環境が整いつつあります。

機械工学系のニーズが高い業界

機械工学を学んだ人材は、企業ニーズが極めて高いと解説しました。では、具体的にはどんな業界のニーズが高まっているのでしょうか? 機械工学を要するものとして、ポピュラーなものをまとめてみました。

・一般機械系:農業機械、建設機械、工作機械、繊維機械、ボイラー
・輸送用機械:自動車、バイク、鉄道、航空機、船舶、エレベーター
・電気機械:一般家電、発電機、通信・電子機器
・精密機械:光学器械、医療機器、測定機

機械工学という分野が、どれほど私たちの生活に欠かせないかがわかりますね。 機械は産業において欠かせないファクターですから、どの業界もエンジニアは引く手数多なのです。「自動車」「一般家電」などはイメージしやすいと思いますが、実は「農業機械」や「医療機器」「エレベーター」といった分野でも非常に重宝されていることをご存知でしょうか。

とくにエレベーター業界は、年々ビルやマンションの高層化が進んでいる影響で需要が増しているだけでなく、人々の大切な足として今後も無くなることはありません。非常に安定性が高く、将来性などを考えると魅力的でお奨めの業界といえるでしょう。

今回は、機械工学系エンジニアの需給状況について解説してきました。エンジニアとは、まさに工業大国日本を支える縁の下の力持ちなのです。 人材不足に対する取り組みもすでに行われてはいますが、今以上に機械工学に興味をもつ学生さんが増えてくれたらうれしいですね。