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自動運転の技術は海にも! 船が自動運航しちゃう未来がきた

船舶輸送は「物流の核をなしている」といっても過言ではありません。 日本で使われている資源は、その多くが外国から輸入されていることはご存知ですよね? これは数字で見ると明白で、例えば石油や液化天然ガスをはじめとするエネルギー資源は、90%以上がタンカー(油槽船)によって国内に供給されています。他の品目についても同様で、小麦や砂糖類などの食品、天然ゴムや木材といった資源も、70%以上が海上輸送によって賄われているんですよ。一度にトラックの数百倍の物資を運ぶことができ、なおかつ環境にも優しいので、今後も活躍し続けることは確実でしょう。

ただ、その大きさゆえ、事故が起きると被害は数十億から数百億円に達することもあり、同じ輸送手段でもトラックのそれとは比較になりません。 2016年に海上保安庁が認知した船舶事故は2014隻あり、2012年から2016年の5年間の事故原因は、77%が人為的要因という結果がでています。こういった事情から、ますます重要な役割が期待される船舶輸送について、今世界中で「自動化」への研究が進められているのです。

政府が発表した「自動操船」の概要について

2017年12月、国土交通省海事局は「自動運航船」に関するロードマップを公開しました。これによるとIoT(Internet of Thing)の発展、すなわち情報通信技術の開発・実用化にともなって、段階的に自動運行システムを構築していくとのことです。船舶は自動車と異なり、複数の人間が作業分担する「24時間稼働のプラント」に似た性格をもちますからね。車とは比較にならないほど大規模なので、技術開発や法の整備には、多くの時間をかける必要があるのです。

現在、すでに多くの船舶へIoT技術が導入されており、乗組員の削減に成功しています。具体的には「AIS(自動船舶識別装置)」や「ECDIS(電子海図)」といった電子機器の貢献が大きく、これまで50名の乗組員が必要だった大型タンカーも、現在では20名で運航することが可能となりました。

AISとは、他船との衝突を防ぐための通信機器のことですね。航海中の各種データを陸上と通信し合うことで、50km周囲の状況を把握することができます。数十年前は「航海士」「機関士」のほかに、「通信士」を乗船させていましたが、AISの登場によってその必要がなくなりました。

ECDISは従来の紙海図を電子化したもので、航海中の位置情報や速度、進路などをディスプレイに表示するシステムのことです。AISと並列化されているため、他船の情報も読み取ることができ、航海中の見張りがかなり簡略化されています。船橋はもちろん、機関室、荷役室、食堂など、船内の各所に設置されているので、乗組員の誰もが随時チェックすることが可能。

このように、現段階でもすでに自動化が進んでいるのですが、今後は離着桟や出入港といった、さらに高度な運航作業までも自動化させる見通しです。具体的には、あらゆる気象状況(雨、風、波浪など)に対応できる高精度なセンサーや、AR(拡張現実)の技術などを用いることで、港湾域での運航を簡略化させるシステムが検討されているようですね。

洋上における航海だけでなく、港湾域における操船までもが簡略化されれば、これまで以上に航海士の負担が減ることになるでしょう。人の負担が減るだけでなく、より安全に運航が可能となります。

そして、国土交通省によると自動運航にはさらに上の段階があるとのこと。それがAI(人工知能)を実装した自動運航システムです。ARやIoTの技術は、あくまでも「運航における乗組員の判断支援」までに留まりますが、高度なAIをシステムに実装できれば「船舶の自律判断による運航」が可能となります。つまり、陸上からの指示や周辺の情報から、システム自身が判断して運航するのです。

もちろん、要所で人の手が必要な部分はありますが、このレベルまで実用化されれば、より少人数での大量輸送が可能になることでしょう。

国内では商船三井が実用化? AR技術を組み合わせた操船支援システム

(動画提供:株式会社商船三井)

運航システムにARを運用する一例として、商船三井の大型原油タンカー「SUZUKASAN」について紹介しましょう。これは2018年10月に試験搭載され、AR表示の効果検証がすでに始まっているプロジェクトです。

SUZUKASANに搭載された運航システムは、船舶前方に取り付けられたカメラの映像に、AISの情報を重ねて表示するというもの。他船や障害物などの位置情報をARを用いて表示することで、操船作業を視覚的にサポートする効果が期待されています。

航海中もさることながら、このシステムは港湾域で大きな力を発揮することでしょう。障害物が多く、なおかつ狭い港湾では、周辺状況の把握が非常に大切です。従来、タンカーの着桟作業は船長の経験則に頼る部分が大きかったですが、このシステムが正確に作動すれば、より精密な操船が可能となります。

加えて、このシステムが実用段階までたどり着けば、陸上からの遠隔操船や、AIによる自律運航システムへの足掛かりとなるはずです。商船三井では実際に、三井E&S造船や東京海洋大学と共同で「自動離着桟実施プロジェクト」を検討しているので、そう遠くない未来、自動運航が実用化されるかもしれませんね。

「船の完全無人化」へ向けた世界中の動き

ARやAIを活用した自動運航船の開発は、世界各国で試みられています。具体的なプロジェクト内容はそれぞれ異なりますが、最終目標はどの国も同じく「無人化」です。最後に、無人化に近い実例として「ヤラ・ビルケラン(Yara Birkeland)」をご紹介しましょう。

「海のテスラ」とも呼ばれるヤラ・ビルケランは、ノルウェーの肥料メーカー「ヤラ・インターナショナル(Yara International)」と、工業グループの「コングスベルグ(Kongsberg)」が協同で開発したコンテナ船です。動力のすべてを電力でまかなうことから、世界初の電気推進船としても注目を集めています。

そして、もうひとつの特徴は、自律運航と遠隔操船を可能とする運航システムにあります。AIによる自律判断と、陸上からの遠隔操作によって「人を乗せずに運航することが可能」ということですね。すでに竣工が完了しているようで、2019年から遠隔操船の実験運航、そして2020年には無人運航が開始される計画となっています。積載量はコンテナ100個程度と、それほど大型船ではありませんが、無人での実験運航に成功すれば、大型タンカーへの応用も十分考えられるでしょう。

日本をはじめ、世界中で開発が進んでいる船舶の無人化。まるでSFのような話ですが、実用化は意外と近いところまで迫っているんです。この調子でAIやARの導入が進んでいけば、船舶による輸出入がよりスムーズ・且つ安全になることでしょう。

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