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【後編】北海道科学大学 太田教授に聞く 『研究を続ける醍醐味と今後の展望』

前編では、強くて軽い素材として各分野から注目されている「繊維強化複合材料」の研究を続けている北海道科学大学 工学部 機械工学科の太田 佳樹教授に、繊維強化複合材料の特長や活用分野、課題点などをお聞きしました。

後編では、引き続き太田 佳樹教授に研究をはじめたきっかけや研究を続ける醍醐味、今後の展望などについてお話を伺います。

他分野の方との交流で新しい切り口が見えてくる

Q:太田教授がこの道を目指したきっかけは何でしょうか。

太田:私の場合は、大学4年生の時のゼミの先生がきっかけですね。大学のゼミで力学の勉強が楽しくなってきて、ゼミの先生に「こういうことを研究すると面白いんだよ」と色々教えてもらいました。 研究職には企業と大学の2通りがあると思うのですが、大学の場合は自分が「こうじゃないか?」と思うことを、若い学生たちと一緒に研究できるのが良いところですね。その反面、すぐに役立つ研究にはなかなかならないというところはあるかもしれません。短期間での投資資金の回収を求められる研究スタンスとはだいぶ違いますね。

Q:研究を続ける醍醐味はどのようなところにありますか。

太田:実際のところ、大学における教育・運営の仕事が多くて研究の時間を作るのも大変なのですが、ほかの分野との交流は面白いですね。 例えば私たちの大学の場合、大学における義肢装具士の養成課程を導入した義肢装具学科があります。その学科との共同研究をしているのですが、基本的に私たち機械工学を学ぶ者は頑丈で壊れない物を作ることを考えます。しかし、例えば下肢装具を付けた患者さんが装着中に転倒した場合のことを考えると、ある程度装具が壊れた方が衝撃を吸収するので患者さんの安全につながるのだということが分かるなど、これまでに考えてこなかった新しい切り口が見えてきます。 そのような点を、異分野である医療介護系の先生とやりとりをしながら研究を進めていくのはとても楽しいですし、勉強になります。 現在は、金属の装具ステーのFRP化を進めているのですが、熱可塑性樹脂を用いたFRPなら人の体温で柔らかくなるので、金属で作るよりも軽く、よりアジャストできる良い装具ができるのではないかという夢を持っていますね。

Q:色々なものに関われるのも醍醐味でしょうか。

太田:基礎研究に近い所がありますからね。昔、新幹線の車両構造の話を車両メーカーさんとしたことがあるのですが、自分が昔から新幹線が好きなもので、部分的に関わった新幹線が実際に街中を走っているというのは嬉しいですね。この仕事をしていると様々な分野の方と交流がもてるのもとても楽しいです。

Q:研究をする中で困難はありましたか。

太田:何をするにも時間が足りないという点でしょうか。大学の運営業務もありますので、やりたくても時間の関係でできないものもあります。そのような中で、自分の中のモチベーションを維持するのも大変ですね。

学生一人ひとりを把握して就職を支援

Q:学生の就職支援はどのような形で行っていますか。

太田:本学は各学科の先生が、学科の教育思想に基づいて就職の指導をするスタンスです。 特に工学系の各学科の教員は様々な企業の方との交流があり、卒業生が企業に就職していたりもするので、採用の話はもちろん、共同研究の話に発展することもあります。 また、本学では学科の先生方が学生のことをかなり詳しく把握しています。例えば学科長という責任のある立場の教員でも、「2年生の〇〇君はこういう性格だからね」といった形で、学生一人ひとりについてちゃんと覚えているんです。学生のことをよく把握していて、適性にあったアドバイスができることが本学の就職支援のベースになっていますね。

東京五輪までと言われたりしますが、現在は工学部系から医療系まで専門職としての就職率が非常に良いです。ただ、本当に大切なのは就職したあとが問題でして、すぐに辞めてしまっては意味がありません。企業や病院などで頑張っていける人材にするために、在学中に学生をどのように育てるかが今の悩みですね。

Q:SECエレベーターにはこれまで北海道科学大学の卒業生が何人も入社していて、今回太田教授の教え子の方も就職されるとお聞きしました。

太田:はい。今年SECエレベーターさんから内定をいただき、来年の4月に就職する予定の学生は、非常に適性が高かったと思います。 その学生は就活を始めた頃は何を仕事にしたら良いのかイメージができないという状態だったのですが、SECエレベーターさんの業界研究セミナーに参加して、自分がメンテナンスに興味があるということをはっきりと認識したようです。 「人々の生活に欠かせないエレベーターを支えるというのは面白い仕事だと思った」と話してくれましたね。良いセミナーを開いていただいて感謝しています。

「役に立つかどうか分からないけれども、まずはやってみる」の精神で

Q:今後の展望についてお教えください。

太田:基本的には自分が面白いと感じることをやりたいです。特に今注目しているのは3Dプリンターを使ったFRPの成形関連ですね。まだ技術的には成熟していない領域だと思うので。また、繊維強化複合材料の良さを医療関係に活用していきたいと考えています。

学生には日頃から、「役に立つかどうか分からないけれども、今まで誰もやっていないし、近い将来誰かがやらなきゃいけないことだろうから、まずはやってみようよ」と声をかけています。自分がやってみたいと思ったことをやってみるのがいちばん楽しいですしね。

どうしても工学部ですと、工学的だったり、世の中の役に立つことを研究しなくてはいけないという雰囲気になってしまうのですが、私はできるかどうか分からないことを試せるのが大学の良さだと思っているのです。 無駄と思われることの中から、意外な発見が生まれてくることもあるのですから、何事もまずは実際に試してみて、自分の目で結果を確かめてみるのが大切だということを今後も学生たちに伝えていきたいと考えています。

(プロフィール)
北海道科学大学
就職支援センター長・国際交流委員長
工学部 機械工学科 教授
文部科学省 科学技術・学術審議会 専門委員
工学博士
太田 佳樹

■北海道科学大学
https://www.hus.ac.jp/

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