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東京電機大学「小平研究室」 ゼロから学生が手作りするレーシングカーが世界のフォーミュラSAEに挑戦し続ける!【Part1(全4回)】

『東京電機大学・小平講師に聞く・フォーミュラSAEとの出会いと今』

国際基準で世界の学生たちが最先端の車の開発を競う「フォーミュラSAE」。
日本で唯一、参戦し続けている東京電機大学「小平研究室」の車体は、世界の“強豪”たちと競いながら、これまで、日本勢では初となる「Cost and Manufacturing Event」(コストを競う部門)で優勝などの実績を残してきました。
技術を追求する学生たちにとって、フォーミュラーカーの開発にはどんな意義があるのでしょうか。そして、貴重な学生時代を技術に費やす価値とは? 
指導にあたる、小平和仙講師にお話をうかがいました。 小平和仙講師

「もの作り」を次世代に


Q.東京電機大学がフォーミュラSAEに取り組む経緯とはどのようなものでしょうか? 先生ご自身のご経歴も含めて、研究内容を教えてください。

小平講師:
もともと私は“技術屋”です。長年にわたってメーカーで自動車の開発をしてきましたので、教職に就いてからも専門は自動車なんです。
2001年に現職に着任後、授業では主に自動車の設計をテーマにし、実験などを指導してきています。

学生たちを教えるうえで、やはり日本の強みは「もの作り」なんだ、という思いに突き動かされています。
技術者として自動車にかかわっていたときから「日本はもの作り」と実感していましたので、「もの作り」の伝統を次世代に受け渡していきたいという気持ちが強いです。

東京電機大学「小平研究室」
フォーミュラSAEは、そんな私にとっては、願っても無い取り組みでした。
最初は「ゼロから手作りでやりたい」という学生の有志がきっかけです。
そこで私に声がかかり、「よし、それなら力になろう」と。

研究室の位置づけとしては、いわば学校公認の部活ですね。
開発費こそ出していただいていますが、海外遠征の費用は自前です。
会場はオーストラリアですから、遠征に行くと、一人最低でも20万円はかかります。
それでも、まったく経験のない学生たちが、「自分もやりたい」といって集まってきました。

フォーミュラSAE(Society of Automotive Engineers=自動車技術者協会)の始まりには、少し背景があります。

大きなきっかけとなったのは、1980年代に起きた自動車産業での日米貿易摩擦です。
米国の車メーカーのビッグ3といわれるフォード、GM、クライスラーの車が売れず、小型で性能のいい日本車が大量に売れたのです。
そのときに米国は日本車の輸入台数を制限したのですが、政治・経済の世界はともかく、技術の世界がそのような排他的なスタンスを取ってはいけません。
優れたもの、新しいものをどんどん取り入れ、開発していくのが技術です。

そのように危機感を持ったメーカー側の主導で誕生したのが、フォーミュラSAEです。
各国の自動車技術者協会が支援して立ち上げた、エンジニア育成プログラム。
学生たちを技術で競わせ、優秀な学生を確保しようという目的がありました。
第1回大会は、1981年に米国で開かれています。

学生気質が戦績に表れる


Q.その大会に2002年から参戦しています。

小平講師:
東京電機大学は、後発チームです。
当時は神奈川工科大学、上智大学、国士舘大学などが参戦して、私たちは彼らを追いかけるように参加させていただきました。

当初は、世界のレベルがどうなのかも何から何まで全くわかりませんでした。
初参戦のオーストラリア大会では、18チーム中、16位。散々な結果でしたね。

しかしそこでめげず、それ以降、私たちは毎年、参加しています。
実は毎年参戦するというのは、結構大変なことです。
費用もそうですし、学生は毎年入れ替わりますから、戦える技術を持ち続けるというのも容易ではありません。
実際、ほかの大学は3年に1回とか、そんなペースのところが多いです。


ともあれ、参戦し続けているうちに成績は徐々に上がっていって、05年には初完走できました。
さらに、部門別では結構健闘していまして、コスト面を競う部門では優勝したこともあります。
また、設計技術で2位になったことも。総合では、最高で4位までいきました。

現在は少し落ち込んでいて、総合で15位ぐらい。
成績には、学生の気質が反映しているように感じています。
当初はがむしゃらに「何でもやってみよう」という学生が多く、それが一定の結果につながっていたのですが、だんだんチームのレベルが上がっていくと、今度は真面目な学生が増えてくる。
彼らは、トライする前に、考えることに時間を割く傾向があります。
結果、実証実験が遅れて大会で良い成績が得られないということになっていました。


しかし、そんな経験を得て、チームはスケジュール管理もシビアにできるようになってきています。
今は、また少しずつ上向いてきている状況といってもいいでしょう。

Part.2へ続く

 
小平和仙 工学博士
(プロフィール)
自動車メーカー勤務を経て、2001年に東京電機大学講師就任。
「小平研究室」を立ち上げ、フォーミュラSAEを指導。
現在は、模擬惑星探査機星開発、エコランカー開発なども指導する。
専門は自動車工学分野。
東京電機大学理工学部理工学科 機械工学系および電子・機械工学系講師。
研究室ホームページ http://kodairalab.rt.dendai.ac.jp/


PART1.『東京電機大学・小平講師に聞く・フォーミュラSAEとの出会いと今』
PART2.『東京電機大学・小平講師に聞く・フォーミュラSAEで得られるものとは!?』
PART3.『チームリーダー・新垣繁輝さんに聞く・「こんなに充実した学生生活になるとは!」』
PART4.『東京電機大学・小平講師に聞く・これからの学生へ伝えたいメッセージとは!?』
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