東京電機大学・小平講師に聞く これからの学生へ伝えたいメッセージとは!?
東京電機大学の小平研究室が取り組む、学生による自動車開発の国際大会「フォーミュラSAE」。約20年にわたって学生たちを指導する小平和仙講師に、これからの技術者に求められるものは何か、アドバイスいただきました。
技術者にはチャレンジ精神が必要
Q.東京電機大学で指導して約20年になります。学生の気質の変化などは感じますか?
小平講師:
今の子は、いい意味で真面目ですよ。
言われたことはしっかりやります。
ただ、言われないと何もやらない、という傾向も見えます。
やらないというより、やってはいけない、と思うのでしょうかね?
私が学生の頃とはだいぶ違いますね。
一人ひとりは個性的なんですよ。
ですが、放っておくと、みんな同じ方向に行きたがる。
同じにしていないと“怖い”という恐怖にコントロールされている気がします。
大学卒業後についても、安定した生活や楽な仕事をしたい、という方向に向いている気がします。
しかし、「技術屋」としては、これは問題ですね。
開発には、「こうしたい」という主体性とチャレンジする心が大切です。
「オレがやるんだ」という気持ち。挑戦し続ける気持ちですね。
Q.それを変えるには、どうすればいいのでしょう?
小平講師:
実は彼ら自身には責任がないんですよね。
子どもの頃から、あれはダメ、これはダメという規制のなかで生きてきて、急に「冒険しろ!」といっても無理な話です。
今の学生たちを作ったのは、我々の世代です。我々に責任があるんですよ。
でも、だからといって、そういう傾向を他人のせいにしていては前に進めません。
自分の人生を生きていくには、失敗しては勉強し、失敗しては勉強することを繰り返しやっていくしかありません。
失敗は成功の母。恐れずにチャレンジし続けることが「技術屋」には絶対に必要な条件です。
それには、やっぱり「こころ」が大切なんです。
繰り返しの話になりますが、「もの作り」でいちばん大切なのは、意志や精神、魂です。それこそが大きな駆動力です。
その上に知識や技術やお金、経験などを載せて走っているわけです。
そこを間違ってはいけません。
どれだけ勉強し、技術を身につけ、お金を得て、経験を積んだとしても、そのベースに肝心な精神がなかったら、何も革新的なものはつくり出せません。
「技術は人なり」。すべては精神がベース
Q.技術以外にも通用しそうなご指摘です。
小平講師:
本当にそうです。
「もの作り」に限ったことではなく、人生においては、すべてが精神をベースにしていると思います。
「これは生産的ではない」「無駄が多い」などと効率ばかりを追いかける世相ですが、ボトムエンドばかりを見て悲観的になっていたら、結局は何もできません。
それよりも、トップエンドだけを見て、勇気を持ってやり抜くことです。
そのためには、素直さや、めげないガッツも重要でしょう。
ときには没頭して、バカになることも必要です。
学生の皆さんには、そんなメッセージを送りたいですね。
Q.長いインタビューにお付き合いいただきありがとうございました。最後に、技術者の目線で、エレベーターについて一言コメントをお願いします。
小平講師:
ふだん当たり前のように利用していますが、よく考えると、エレベーターってすごいですよね。
制御された乗り物で安全性、信頼、品質、性能が重視されるという点では、レースカーと一緒です。
いや、むしろエレベーターは上下方向の移動なので、車よりも安全性が重視されるといえるでしょう。
そう考えると、日本製のエレベーターが世界各国で稼動しているというのは誇らしいですね。
その点は車と同じです。
技術者としても、安全性と快適さの両方を高次元で追求する分野ですから、きっと面白いだろうな、と思います。
小平和仙 工学博士
(プロフィール)
自動車メーカー勤務を経て、2001年に東京電機大学講師就任。
「小平研究室」を立ち上げ、フォーミュラSAEを指導。
現在は、模擬惑星探査機星開発、エコランカー開発なども指導する。
専門は自動車工学分野。
東京電機大学理工学部理工学科 機械工学系および電子・機械工学系講師。
研究室ホームページ http://kodairalab.rt.dendai.ac.jp/
PART1.『東京電機大学・小平講師に聞く・フォーミュラSAEとの出会いと今』
PART2.『東京電機大学・小平講師に聞く・フォーミュラSAEで得られるものとは!?』
PART3.『チームリーダー・新垣繁輝さんに聞く・「こんなに充実した学生生活になるとは!」』
PART4.『東京電機大学・小平講師に聞く・これからの学生へ伝えたいメッセージとは!?』